すべての教員に求められる専門的教育
特別支援教育とは、視覚障害、聴覚障害、言語障害、知的障害、肢体不自由、病弱などの心身の障害や、学習障害(LD)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)など、発達障害の子どもたちを対象とした専門的な教育のことです。
また、子ども一人ひとりの教育的ニーズを把握して、個別の指導計画・教育支援計画を立て、関係者とチームワークで取り組んでいくといった教育的アプローチが特徴です。
特別支援教育の教諭は、子どもたち一人ひとりにオーダーメイドの教育を設計する教育プランナーであり、子どもたちの困難を改善・克服し、自立や社会参加を指導する教師であり、時には、地域の福祉、医療、労務など関係機関の特別支援コーディネーター、そして小中学校の特別支援教育をサポートする役割をも担う、この分野のスペシャリストです。通常学級の教員の専門性の上に、さらに障害特性に応じた専門性が必要となります。
特別支援教育を学んだ学生は、特別支援学校教諭をはじめ、通常の学校の特別支援学級、通級指導教室の教員としても活躍しています。また通常学級の教諭も、必要に応じ特別支援教育を行う義務があることが改正され、平成19年度から施行されている学校教育法に明示されましたので、今はある意味、すべての教員が特別支援教育に携わります。
増加する対象児童生徒数、専門家不足が課題
特別支援学校は、令和2年度現在、全国で1,149校あり、144,823名の在籍者がいます(文部科学省,2021)。10年前の平成22年度では1,039校、121,815名だったので、少子化の時代に学校数も児童生徒数も増えており、ニーズが高まっています。
「日本の特別支援教育の状況について」より(文部科学省、2019)
特別支援学校だけでなく、通常学校にある特別支援学級の学級数、在籍者数も増加しています。平成22年度には44,010学級、145,431名でしたが、令和2年度は69,947学級、在籍者数302,473名と倍増しています。
「日本の特別支援教育の状況について」より(文部科学省、2019)
また、通級による指導を受けている児童生徒も同様に増えています。一方で、通級指導教室が設置されている学校種は小学校が圧倒的に多く、中学校、高校(平成30年度より開始)での増設を求める声も少なくありません。
「特別支援教育資料(令和元年度)第2部調査編」より(文部科学省,2020)
「特別支援教育資料(令和元年度)第2部調査編」より(文部科学省,2020)
特別支援学校の教員数は、令和2年度現在で85,933人。その内、特別支援学校免許保有率は積極的な政策もあり上昇傾向にありますが、まだ80%程度で、特に聴覚障害や視覚障害については半数に満たない(新規採用者)状況です。特別支援教育を専門的に学んだ教員が不足しているという大きな課題を抱えています。
参考までに、人材確保法により教員の給与は、一般の公務員よりも高めになっていますが、特別支援学校教員は、小中学校の教員と比べて、さらに1割程度増しになっているのが一般的です(都道府県により異なります)。